コラム

表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の解説(3)

2021/02/21
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前回まで、表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律(以下「法」といいます。)について、その制度内容の一部を解説しました。

今回は、表題部所有者等を特定した場合や特定できなかったの場合の措置や制度、利害関係人が関与する場合の手続きについて解説します。

 

表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の解説(1)

表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の解説(2)

 

1 表題部所有者の所有者等を特定したときの措置

(1) 表題部所有者として登記すべき者の特定に関する判断

登記官は、所有者等の探索により得られた情報の内容その他の事情を総合的に考慮して、表題部所有者として登記すべき者の特定について、次のいずれかに該当するかを判断することになります(法14条1項)。

① 表題部所有者不明土地の表題部所有者として登記すべき者があるとき(当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属する場合にあっては、全ての共有持分について表題部所有者として登記すべき者があるとき。)。

② 当該表題部所有者不明土地の表題部所有者として登記すべき者がないとき(当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属する場合にあっては、全ての共有持分について表題部所有者として登記すべき者がないとき。)。

③ 当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属する場合において、表題部所有者として登記すべき者がない共有持分があるとき(前号に掲げる場合を除く。)。

④ ②・③のいずれかに該当する場合において、その事由が次のいずれかに該当するとき。

イ 当該表題部所有者不明土地(当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属する場合にあっては、その共有持分。ロにおいて同じ。)の所有者等を特定することができなかったこと。

ロ 当該表題部所有者不明土地の所有者等を特定することができた場合であって、当該表題部所有者不明土地が法人でない社団等に属するとき又は法人でない社団等に属していたとき(当該法人でない社団等以外の所有者等に属するときを除く。)において、表題部所有者として登記すべき者を特定することができないこと。

そして、登記官が上記の所有者等の特定の判断をしたときは、その理由その他法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(所有者特定書)を作成しなければならないものとされています(法14条2項)。登記官は、所有者等の特定の判断をしたときは、その理由をその他法務省令で定める事項を記録し、又は記録した書面又は電磁的記録を作成しなければならないとされています(法14条2項)。この記録を所有者特定書といい、①手続番号(法3条1項の探索を行う際に表題部所有者不明土地ごとに付す番号)②表題部所有者不明土地に係る所在事項、③結論、④理由、⑤所有者等探索委員の意見が提出されている場合には、その旨(当該意見が所有者特定所の結論とどのような関係にあるのかを知る端緒とするためのもの)及び⑥作成の年月日を記録するものとされています(施行規則7条)。

この所有者特定書に記載され、又は記録された情報は、永久に保存するものとされ(施行規則13条1項)、表題部所有者の登記後は、登記簿の附属書類として、請求人が利害関係を有する部分に限り、閲覧請求の対象となります(不動産登記法121条2項)。

 

(2) 表題部所有者欄の職権抹消登記及び表題部所有者登記

登記官は、所有者等の特定をしたときは、所有者等が特定された表題部所有者不明土地につき、職権で、遅滞なく、表題部所有者の登記を抹消しなければならないとされています(法15条1項)。この場合において、登記官は、不動産登記法第二十七条第三号の規定にかかわらず、当該表題部所有者不明土地の表題部に、法15条1項各号が掲げる所有者等の特定の区分に応じて、当該各号に定める事項を登記するものとされています。

具体的には、①表題部所有者として登記すべき者を特定することができたときは、当該表題部所有者として登記すべき者の氏名又は名称及び住所を(法15条1項1号及び同3号参照。)、②表題部所有者として登記すべき者がないときには、その旨(法15条1項2号乃至同4号参照)を記載することになります。

 

(3) 表題部所有者登記の公告

表題部所有者不明土地の所有者等の探索、特定及び登記に係る手続は職権で行われます。しかし、当該土地の権利を主張する者や過去の経緯などを知る者等から意見の提出がある場合には、これを判断資料に加えるのが適切です。また、表題部所有者の登記には、表題部所有者に所有権の保存の登記の申請適格があることを考慮すると、当該土地の所有者であると主張する者に対する権利保障を与える必要があります。

そこで、登記官は、表題部所有者の登記をしようとするときは、あらかじめ、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならないものとされています(法15条2項)。また、表題部所有者の登記を行う旨を広く周知するため、上記公告とは別に、その概要を法務局等のホームページに掲載するものとされています。

また、当該登記をした時は、遅滞なくその旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならないとされています(法16条)。また、表題部所有者として登記すべきものを特定することができたとき(表題部所有者として登記すべき共有持分がある場合)には、表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人であって知れている者に対し、登記が完了した旨を郵便、信書便その他適宜の方法により通知しなければならないとされています(施行規則12条1項及び同3項参照)。

 

(4) 表題部所有者の相続人が登記申請をする場合における所有者特定書の利用

表題部所有者の相続人が、相続を原因とする登記の申請をする場合において、所有者特定書の写しを提供したときは、当該書面により相続があったことを確認することができる限りにおいて、当該書面の提供をもって、相続があったことを証する市町村長その他の公務員が作成した情報の提供に代えることができるものとされています(ただし、当該所有者特定書は、相続人の全部又は一部が判明しない旨の記録がないものに限られ、その記録があるものを提供しても、相続があったことを証する情報の提供を省略することはできません)。

また、表題部所有者の相続人が、所有権の保存の登記の申請をする場合において、当該表題部所有者に係る所有者特定書の写しを提供したときは、当該書面により当該相続人の住所を確認することとなる限りにおいて、当該手続番号の提供をもって、登記名義人となる者の住所を証する市町村長その他の公務員が作成した情報の提供に代えることができるとされています(ただし、当該所有者特定書は、当該相続人の住所が記録されているものに限られ、その記録がないものを提供しても、住所を証する情報の提供を省略することはできません)(以上、令和元年11月21日民二第599号民事局長通達 第7参照。)。

 

2 所有者等特定不能土地の管理制度

(1) 所有者等特定不能土地管理制度の創設

表題部所有者不明土地について、①登記官による探索を行ってもなお所有者等を特定することができなかった場合や、②当該表題部所有者不明土地の所有者等を特定することができた場合であっても、当該表題部所有者不明土地が法人でない社団等に属するとき又は法人でない社団等に属していたときにおいて、表題部所有者として登記すべき者を特定することができない等、表題部所有者として登記すべき者がない場合には、その旨及びその理由を登記することになります(法15条1項2号及び3号)。しかし、登記官による法に基づく調査によってもなお所有者等を特定できなかった場合、関係資料の散逸が今後も進むことを考えると、今後も特定ができないままということが想定されます。

そこで、裁判所は、所有者等特定不能土地について、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、その申立てに係る所有者等特定不能土地を対象として、特定不能土地等管理者による管理を命ずる処分(以下「特定不能土地等管理命令」といいます。)をすることができることとされました(法19条1項)。

 

(2) 管理を命ずる処分がされる場合

管理を命ずる処分が下されるときは、「必要があると認めるとき」、すなわち、所有者等特定不能土地の管理の必要があると認めるときをいい、例えば、①当該土地ががけ地などで崩落を防止するため、必要な工事をする必要ある場合にその権原を有する者がいない場合、②民間事業者等が当該土地を買収して開発を行いたい場合、③当該土地について時効取得を主張する者が訴訟を提起する場合などが該当します。

 

(3) 特定不能土地等管理命令の取り消し

特定不能土地等管理命令が取り消されるのは、以下の場合になります(法29条1項)。

① 特定不能土地等管理者が管理すべき財産がなくなったとき(特定不能土地等管理者が管理すべき財産の全部が前条第一項の規定により供託されたときを含む。)、その他特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等の管理を継続することが相当でなくなったときは、特定不能土地等管理者若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、特定不能土地等管理命令を取り消さなければならないとされています。

② 特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等の所有者が当該所有者等特定不能土地等の所有権(その共有持分を含む。)が自己に帰属することを証明したときは、裁判所は、当該所有者の申立てにより、特定不能土地等管理命令を取り消さなければならないとされています。

 

(4) 特定不能土地等管理者の権限

特定不能土地等管理者が選任された場合には、特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地及びその管理、処分等により特定不能土地等管理者が得た財産の管理及び処分をする権利は、当該特定不能土地等管理者に専属することになります(法21条1項)。なお、「その管理、処分等により特定不能土地等管理者が得た財産」とは、土地から生じた天然果実(例えばりんごの果樹園だったのならそこで収穫されるりんごなどが挙げられます)や土地の売却代金等があります。

ただし、特定不能土地等管理者が、①保存行為又は②所有者等特定不能土地等の性質変えない範囲内においてその利用又は改良を目的とする行為(例えば、土地の売却)、これらの範囲を超える行為をするには、その行為をする理由を疎明して(法21条4項)、裁判所の許可を得なければなりません(法21条2項)。裁判所の許可を得ないで行われた行為は無効ですが、特定不能土地等管理者は、これをもって善意の第三者に対抗することはできません(法21条3項)。

また、特定不能土地等管理者は、特定不能土地等に関する訴えについて、訴訟当事者となります(法23条)。その他訴えに関する規律は、法23条により規律されています。

 

(5) 特定不能土地等管理者の義務・地位

特定不能等管理者は、就職の後直ちに特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者不明土地等の管理に着手しなければならず(法22条)、その職務を行うにあたって、善良な管理者の注意をもって(法24条1項)、また、誠実かつ公平に(法24条2項)、当該管理者に専属した権限を行使しなければならないとされています。

なお、特定不能土地等管理者は、正当な事由があるときは、その原因となる事実を疎明したうえで辞任することができます(法25条1項及び同2項)。また、その任務に違反して対象土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、特定不能土地等管理者の陳述を聞いたうえで、当該管理者を解任することができます。

 

3 法における利害関係人の役割

ここまで、一通り制度を見てきた通り、法は表題部所有者不明土地について所有者を探索し、たとえ所有者を特定することができなかったとしても特定不能土地等管理者を置く等して適切な管理を図ろうとしています。その手続きにおいては、登記官又は特定不能土地等管理者が主体となるものです。

他方で、法は利害関係人に関しては上記制度に一定の介入を認めています。

例えば、法4条においては、登記官が土地の所有者の探索を職権で行う旨の公告があったときは、「利害関係人」は、登記官に対し、表題部所有者不明土地の所有者等について、意見又は資料を提出することができるとしています。

また、法19条1項において、裁判所は、所有者等特定不能土地について、必要があると認めるときは、「利害関係人」の申立てにより、その申立てに係る所有者等特定不能土地を対象として、特定不能土地等管理者による管理を命ずる処分をすることができるとしています。

裁判所は、特定不能土地等管理命令の変更又は取消し決定に対しては、「利害関係人」に限り、即時抗告をすることが出来ます(同条4項)。

更に、利害関係人には、特定不能土地等管理者を解任の申立権が認められています。この際に、特定不能土地等管理者の陳述を聞く必要があり(法26条2項)、解任の申立てを却下する裁判には理由を付さなければなりませんが(同条3項)、当該解任の裁判については「利害関係人」に限り、即時抗告をすることができます(同条4項)。

そして、法29条1項において、裁判所は、特定不能土地等管理者が管理すべき財産がなくなったときその他特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等の管理を継続することが相当でなくなったときは、特定不能土地等管理者若しくは「利害関係人」の申立てにより又は職権で、特定不能土地等管理命令を取り消さなければならないとしています。こちらに関しても、特定不能土地等管理事由の解消による特定不能土地等管理命令の取り消しの決定に対しては、利害関係人に限り、即時抗告をすることができます(法29条4項)。

 

4 利害関係人として関与する際の弁護士に依頼するメリット

法において、表題部所有者不明土地について取引を望む者又は当該土地について権利を主張する者は、利害関係人として手続きに関与する制度設計がなされています。

しかし、利害関係人として手続きに関与するためには、法に関する専門的知識及び民法その他の関係法令に関する正式な理解が不可欠です。

例えば、法4条の「意見又は資料」として、どのような意見を出し、どのような資料を提出するのが適切なのか、法26条において「特定不能土地等管理者がその任務に違反して特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由がある」とは具体的にどのような場合なのか等、法的な専門的知識がないと判断できない場合も多々あります。

このような利害関係人として手続きを遂行する際には、弁護士の関与が不可欠です。所有者不明土地問題に積極的に取り組む当事務所におまかせください。

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