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表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の解説(2)

2021/02/13
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表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の解説(2)

 

前回は、表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律(以下「法」といいます。)について、その目的や趣旨を解説しました。

表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の解説(1)

今回は、このたび法律が創設した制度内容のうち、「表題部所有者不明土地について、所有者の探索に関する制度」について詳しく解説します。

 

1 所有者等の探索の対象となる地域の選定基準

法では、登記官は、表題部所有者不明土地について、当該表題部所有者不明土地の利用の現況、当該表題部所有者不明土地の周辺の地域の自然的社会的諸条件及び当該地域における他の表題部所有者不明土地の分布状況その他の事情を考慮して、表題部所有者不明土地の登記の適正化を図る必要があると認めるときは、職権で、その所有者等の探索を行うものとするとされています(法第3条第1項)。

 

表題部所有者不明土地は、全国に相当数存在しますので、網羅的に探索していくことは現実的ではなく非効率です。そこで、法務省は、法第3条1項に基づく探索の対象地域の選定基準を定め、当面の間、以下の「1(1)」の「考慮すべき要素」及び、「2」の「優先度判定の基準」に従い、所有者等の探索の対象となる地域を選定するものとされています。そして、各法務局又は地方法務局は、選定された地域について法務局のホームページにおいてその地域を明らかにするなどの措置を講ずるものとされています(令和元年10月17日法務省民二台253号法務省民事局長通達。以下、その内容を引用します[1]。)。

 

「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律第3条第1項に基づく所有者等の探索の対象地域の選定基準等

 

第1 所有者等の探索の対象となる地域の選定

各法務局又は地方法務局は,当分の間,地方公共団体等の要望を踏まえ, 下記1の要素を考慮した上,下記2の基準に従い,所有者等の探索の対象となる地域(不動産登記法(平成16年法律第123号)第34条第1項第1号に規定する「字」をいう。以下同じ。)を選定するものとする。

なお,下記1の要素は,自然環境や我が国領域等の保全を図るなど諸般の実情に応じ,必要があるときは,各法務局又は地方法務局において,これを付加することを妨げないものとする。

 

 

1 考慮すべき要素

(1)       土地の利用の現況及び自然的社会的諸条件

ア 地震等の自然災害等により大きな被害を受けたため,早急に復旧・復興作業等を行う必要がある地域であること。

地震等の自然災害等により大きな被害を受けた地域については,復旧・復興事業のために用地取得などが行われる場合が多いところ,土地所有者が不明の場合には,その円滑な実施に支障を生じさせる要因となることから,このような地域については,所有者等の探索の必要性が高いと考えられる。

イ 今後,地震等の自然災害が発生した場合に大きな被害を受ける可能性が高く,早急に防災・減災対策等を講じる必要がある地域であること。

地震等の自然災害が発生した場合に大きな被害を受ける可能性が高い地域については,被害を最小限に抑えるとともに,被災後の復旧・復興事業を円滑に行うことができるよう,その用地を取得などする場合が多いところ,土地所有者が不明の場合には,その円滑な実施に支障を生じさせる要因となることから,このような地域については,所有者等の探索の必要性が高いと考えられる。

ウ 地方公共団体においてまちづくりや森林の整備などの土地利用や土地の調査に関する計画を策定している地域であること。

地方公共団体においてまちづくりや森林の整備などの土地利用や土地の調査に関する計画を策定している地域については,事業の実施や用地取得などの際に所有者の確認や同意取得,土地境界の確認などが行われる場合が多いところ,所有者が不明の場合には,事業の円滑な実施に支障を生じさせる要因となることから,このような地域については,所有者等の探索の必要性が高いと考えられる。

エ 地域コミュニティが衰退し,地域の実情を知る者が乏しくなるため, 早期に所有者等の探索を行う必要がある地域であること。

地域コミュニティが衰退し,地域の実情を知る者が乏しくなるような地域については,表題部所有者不明土地を所有していた者や歴史的経緯を知る人物が失われるおそれが高く,所有者等の探索が今後ますます困難となると考えられることから,このような地域については, 所有者等の探索の必要性が高いと考えられる。

 

(2) 分布状況

字単位当たりの表題部所有者不明土地が多い地域であること。

表題部所有者不明土地が一定の地域内に多数存在する場合には,当該地域においてはこれをまとめて解消するのが合理的であると考えられる。

 

2 優先度判定の基準

1(1)の要素については,アからエの順に優先度が高いものとして対象地域を選定するものとする。なお,1(1)ウに該当する地域のうち,用途が指定されていない地域の優先度については,1(1)ウと1(1)エの間に位置するものとして取り扱うものとする。

1(1)の要素に基づいて判定した結果,優先度の高さが同じ地域が複数存在する場合には,(2)の要素に基づき表題者所有者不明土地の多い地域から順に選定するものとする。

 

第2 探索作業の実施

各法務局又は地方法務局は,第1により選定された地域について法務局のホームページにおいてその地域を明らかにするなどの措置を講ずるものとする。その上でその地域における所有者等の探索を実施する必要のある表題部所有者不明土地について探索を実施するものとする。」

 

2 登記官による所有者等の探索手続の開始

登記官が法に基づく所有者等の探索手続を開始しようとするときは、以下の手続きによります。

① 職権表示登記等事件簿(不動産登記規則(不登規則)18条6号)に登記の目的、立件の年月日及び立件の際に付した番号(立件番号)並びに不動産所在事項を記録する(不登規則96条1項)

② 法務省令による公告(法3条1項。なお、この公告は対象土地の所在地を管轄する登記所の掲示場その他の登記所内の公衆の見やすい場所に掲示して行う方法、又は、法務局等のウェブサイトに30日以上掲載する方法により行うものとされています(法規則2条1項)が、当面の間は登記所の掲示場その他の公衆の見やすい場所に掲示して行う方法によるものとされています)。

③ 上記公告とは別に、公告の概要を各法務局等のホームページに掲載する方法によって明らかにする(これは、利害関係人からの意見又は資料の提出を促す趣旨です)。

 

3 探索の対象となる所有者の範囲

登記官の探索及び特定の対象となる所有者とは、所有権又は共有持分が帰属し、または帰属していた者とされています。

一元化作業が開始された昭和35年以降現在に至るまで既に60年以上が経過している状況では、昭和35年時点での所有者を特定したところで問題の解決には至りません。むしろ、現在の所有者さえ特定できれば問題解決に至ります。

そこで、探索の対象としては、過去に所有権又は共有持分が帰属している者だけではなく、現時点での所有者又は共有持分が帰属している者も含み(所有者等)、その対象とされています。

 

4 登記官に与えられている調査権限の内容

不動産登記法上、登記官は、職権で表示に関する登記をしようとする場合、必要があると認めるときは、当該不動産を検査し、又は当該不動産の所有者その他の関係者に対し、文書等の提出を求め、若しくは質問するなどの調査をすることができるとされています(不動産登記法(不登法)29条)。これは、「登記官の実地調査権」と呼ばれるものです。不登法29条で調査できるのは、当該不動産のみであり、当該不動産に関連する土地は調査できません。しかし、表題部所有者不明土地の所有者の調査の際には、隣接する土地やその周辺の土地など、関連する不動産について調査が必要となる場合も否定できません。

そこで、法5条は、登記官に、

①表題部所有者不明土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をすること

②表題部所有者不明土地の所有者、占有者その他関係者からその知っている事実を聴取し又は資料の提出を求めること

③その他表題部所有者不明土地の所有者等の探索のために必要な調査をすること

以上の権限を認めました。

 

5 登記官による所有者探索の具体的内容

(1) 資料の収集

登記官は、登記簿、閉鎖登記簿及びそれらの附属書類、地図又は地図に準ずる図面、旧土地台帳、旧家屋台帳、共有者氏名表、並びに住宅地図等の収集を行い、これらと関係地方公共団体の長その他の者から提供された情報並びに利害関係人から提出された意見又は資料に基づく所有者等の調査を行うことになります。

特に、登記官は、関係地方公共団体の長その他の者に対し、所有者等に関する情報の提供を求めることができます(法8条)。提供依頼の対象となる情報としては、官公署に保管されている道路台帳、路線図、林地台帳及び林地台帳地図、墓地台帳、過去の自治体名簿、農業委員会が保管している耕作者名簿、農地台帳、地籍調査票、財産管理台帳等の資料が想定されます。また、住民票の写し、住民票の除票の写し、戸籍の附票の写し又は戸籍の附票の除票の写しの交付を請求することも想定されます。

また、利害関係人は、表題部所有者不明土地について所有者等の探索を行う旨の公告があったときは、登記官に対し、所有者等についての意見又は資料を提出することができます(法4条前段)。登記官が意見又は資料を提出すべき相当の期間を定め、かつ、法務省令で定めるところによりその旨を公告したときは、利害関係人は、その期間内に意見又は資料を提出しなければならないものとされています(法4条後段)。ここでいう「利害関係人」には、表題部所有者不明土地の所有者等の特定について利害関係を有する者を広く含み、当該土地について実際に権利を有する者や現に当該土地を占有する者などが含まれるものとされています。

(2) 実地調査(法5条)

登記官は、利害関係人から提出された意見又は資料、公知の事実若しくは登記官が職務上知りえた事実等により登記官がその必要が無いと認めた場合を除き、法5条の規定により実地調査を行わなければなりません。具体的には、相続人や近隣住民の証言、寺院が保管している過去帳や歴史的文献等の参考資料の収集及び調査を行うことになります。なお、実地調査をした際には、法施行通達別記第4号様式による調査票に所要の事項を記載するものとされています。

(3) 実地調査の際の他人の土地への立ち入り(法6条1項・2項)

法6条1項によって、法務局又は地方法務局の長は、登記官が法第5条の規定により表題部所有者不明土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をする場合において、必要があると認めるときは、その必要の限度において、登記官に、他人の土地に立ち入らせることができます。

具体的には、①実地調査をする場合において、必要があると認めるときに、②あらかじめその旨並びにその日時及び場所を立入り対象土地の占有者に通知したうえで(なお、この通知は文書でも口頭でも差し支えないものとされています)行うことができます(法6条2項)。但し、宅地又は垣、柵等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとする登記官は、予め、(口頭その他の方法で)立入りの際に当該土地の占有者に告げなければならず(法6条3項)、日の出前又は日没後は、土地占有者の承諾があった場合を除き、立入調査をすることはできません(法6条4項)。また、立入調査をする際には、登記官は必ず身分証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければなりません(法6条6項)。土地の占有者は、正当な理由がない限り、第1項の規定による立入りを拒み、又は妨げてはならず(同2項)、この規定に違反した場合は、30万円以下の罰金に処せられます(法34条)。

ただし、国は、第1項の規定による立入りによって損失を受けた者があるときは、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければなりません(法6条7項)。

 

6 所有者等探索委員制度

「所有者等探索委員制度」とは、「必要な知識・経験を有する者から任命される委員に、必要な調査を行わせ、登記官の調査を補充する制度」です。

登記官は、表題部所有者不明土地の所有者等の探索を行う場合において、必要があると認めるときは、所有者等探索委員に必要な調査をさせることができます(法11条1項)。具体的には、弁護士、司法書士、土地家屋調査士等の士業のほか、過去に地方公共団体等において用地取得を担当し、表題部所有者不明土地の所有者等の探索を行った経験を有する者などが想定されています。

「必要があると認めるとき」とは、登記官のみの調査では所有者等の探索が困難であると考えられる場合をいいます。そして、法12条において、所有者等探索委員は調査に当たって登記官の権限と同等の権限が与えられています。

 

7 実際の法の運用について

現時点で、各法務局にて法に基づく探索は既に開始されています。

(東京法務局)

http://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/page000001_00011.html

(福岡法務局)

http://houmukyoku.moj.go.jp/fukuoka/page000001_00015.html

 

[1] http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001308980.pdf

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