コラム

表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の解説(1)

2021/02/07
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1 表題部所有者不明土地

現在の土地の登記簿には、「表題部」という欄があります。これは、昭和35年の不動産登記法の改正により創設された制度で、土地の表示や地番、所在、地目等が記載された部分です。この「表題部」には「所有者」欄がありますが、ここに記載される所有者を「表題部所有者」といいます。

表題部欄を創設した際、不動産登記簿の表題部所有者欄は、その当時存在した土地台帳の記載が移記されました。しかし、この土地台帳には、住所の記載がなかったり、いわゆる記名共有地として「A外〇名」などという記載がされているなど、氏名・住所につき変則的な記載がされているものが多くありました。

この変則的な記載が、現在の不動産登記簿の表題部欄に引き継がれたことで、表題部所有者欄の氏名・住所が正常に記録されていない土地、いわゆる表題部所有者不明土地が全国に多数存在しています。法務省民事局の調査によれば、全国の土地のうち、約1%ほどの土地が表題部所有者不明土地になっています。

 

2 表題部所有者不明土地の問題点

表題部不明土地は、氏名や住所の記録がないことにより、戸籍や住民票等による所有者調査の手掛かりがなく、所有者の発見が難しくなります。

自治体が携わる用地取得や民間取引において交渉相手が把握できないため、結果として土地が放置されることになり、適切な管理ができない状態となることもあります。

表題部所有者不明土地を解消するためには、公的資料や歴史的な文献(例えば、寺で保管されている過去帳や、地域内の土地に関する歴史書等)を調査したり、その土地の経緯を知る近隣住民等からの聴き取りなどによる所有者の特定が必要となります。しかし、歴史的資料の散逸、人口減少、高齢化及び地方から都市等への人口移動による地域コミュニティの衰退によって、所有者の特定がますます困難になるおそれがあります。

 

3 法律のポイント

こうした問題点をふまえて制定された表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律には以下のポイントがあります。

 

① 表題部所有者不明土地について、所有者の探索に関する制度を設ける

(令和元年11月22日施行 )

・登記官に所有者の探索に必要な調査権限を付与(各種台帳情報の提供の求め等)

・所有者等探索委員制度(必要な知識・経験を有する者から任命される委員に、必要な調査を行わせ、登記官の調査を補充する制度)を創設

② 探索の結果を登記簿に反映させるための不動産登記の特例を設ける

(令和元年11月22日施行)

・探索の結果を踏まえて、表題部所有者の登記を改めるための規定を整備

③ 探索の結果、所有者を特定することができなかった土地について、適切な管理を可能とする制度を創設する(令和2年11月1日施行)

登記官が探索を行ってもなお所有者を特定することができなかった土地について、 新たな財産管理制度(裁判所の選任した管理者による管理)を創設

 

<参考>

http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000027.html(法務省Webサイト)を参照した。

※表題部登記の沿革については、「不動産登記制度の沿革と役割」(東京財団研究所)https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=2967 が詳しい。

 

次のページ: 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の解説(2)

 

目次

・表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の解説(1)[本ページ]
表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の解説(2)
表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の解説(3)

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