目次
- 共有等法令解説 第1 共有物を使用する共有者と他の共有者との関係等
- 共有等法令解説 第2 共有物の変更行為(本ページ)
- 共有等法令解説 第3 共有物の管理行為
- 共有等法令解説 第4 共有物の管理者
- 共有等法令解説 第5 変更・管理の決定の裁判の手続
- 共有等法令解説 第6 裁判による共有物分割
- 共有等法令解説 第7 相続財産に属する共有物の分割の特則
- 共有等法令解説 第8 所在等不明共有者の持分の取得
- 共有等法令解説 第9 所在等不明共有者の持分の譲渡
- 共有等法令解説 第10 相続財産についての共有に関する規定の適用関係
第2 共有物の変更行為
1 現行法の内容とその問題点
⑴ 現行法の内容
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない(民法251条)。
⑵ 現行法の問題点
共有物の管理や処分において問題となる行為が、果たして「変更」に該当するのかについて実務上議論が分かれています。
そのため、実際の事案を処理する際に、慎重を期して共有者全員の同意をとらざるを得ず、共有物の円滑な利用等の妨げになることがあります*1。
2 問題点を解決する方向性
不必要に共有者全員の同意を要求することによって、問題となっている行為をすることが不可能になることを回避するなどの観点から、「変更」の範囲に限定を付しました*2。
3 解決のために定められた改正法の内容とその趣旨
⑴ 改正法の内容
民法第251条の規律が次のように改められました。
① 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。②において同じ。)を加えることができない(改正後民法251条1項)。
② 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる(改正後民法251条2項)*3。
⑵ 改正法の趣旨
共有物の「変更」とは、一般的に、「共有物の形状又は効用を変更すること」、と解釈されています。
この点、裁判実務・学説では,共有物全体について売却その他の法律上の処分をする場合についても、同様に共有者全員の同意を要するものと解されています。その説明としては,①法律上の処分も民法第251条の「変更」に含まれるとするものと、②「変更」には含まれないが、共有物全体を処分することは共有者全員の持分権を処分することであり、当然に共有者全員の同意が必要になるとするものがあります。
共有物の「変更」とされる行為のうち、「共有物の形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」(「軽微変更」とされます)を除外したのは、客観的に共有者に与える影響が軽微である行為については、持分価格の過半数により決定できるとすべきという考え方によるものです*4。
なお、改正後民法251条2項については、新たな裁判手続を創設するものです。
4 残された課題
いわゆる軽微変更に該当する行為(客観的に共有者に与える影響が軽微である行為)とは何か、今後の裁判例の集積等に委ねられることになります。
また、現行法下では、共有物の処分行為が民法第251条の「変更」に当たるかどうかについて争いがありますが、「変更」に法律上の処分が含まれるか否かは、引き続き解釈に委ねられます*5。
*1 民法不動産登記法の改正に関する中間試案補足説明(PDFファイル) 3頁、法律のひろば2021.10 11頁
*2 荒井達也「Q&A 令和3年 民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響」 48頁、補足説明 3頁
*3 要綱案(法務省HP / PDFファイル) 2頁及び3頁