コラム

所有者不明土地に関連する法律の改正案について

2022/03/14
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1.所有者不明土地特別措置法改正案を閣議決定

「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律案」が、去る令和4年2月4日、閣議決定されました。(→ 国土交通省:「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律案」を閣議決定

「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(所有者不明土地特別措置法)」とは、所有者不明土地を地域のために役立てる制度や収用手続の迅速化のための制度を定める法律です。

今回の改正案では、大要、所有者不明土地の利用用途を防災施設や再生可能エネルギー設備に広げるとともに、再生可能エネルギー発電設備等の一定の目的については、使用期限を10年から20年に延長するものとされています。

 

2.今回の改正法の背景や必要性

(1) 所有者不明土地の増加の懸念とその問題点

我が国では、人口減少や少子高齢化が加速し、相続件数が増加する一方で、土地の利用ニーズが低下、所有意識は希薄しており、所有者が不明となっている土地(所有者不明土地)が増加していくことが見込まれます。2016年時点で、全国に九州全土の面積を上回る所有者不明土地が存在し、2億3千万筆ある土地のうち、所有者不明率は20.3%にも達しているとされています。また、所有者不明土地が障壁となり、公共事業が停滞したり土地が荒廃したりすることで、2017年から2040年までの経済損失額は、少なくとも累計で6兆円に及ぶと見積もられており※、所有者不明土地問題の解消は喫緊の課題と言えます。そして、これらの土地は適切に管理されていないことも多いことから、年々激しさを増す自然災害等により、周囲に深刻な悪影響を及ぼしかねず、地域の生活や安全に支障をきたすことが懸念されています。

※所有者不明土地問題研究会調べ(2017)

図:住民から市町村に苦情のあった管理不全土地の対応状況

 

(2) 所有者不明土地の利用ニーズや改正の必要性

所有者不明土地特別措置法では、地域福利増進事業として所有者不明土地を活用することが認められています。この点、現行法では、公園や緑地、学校等の用途が認められてきましたが、このほか、防災施設や再生可能エネルギー発電設備や蓄電設備として長期間利用したいとのニーズが地方自治体から多く寄せられていました。

また、現行法上、地域福利増進事業や土地収用手続きの対象となる土地は建物の無い土地に限られるものとされていますが、現に利用されておらず、かつ、腐食や損傷により利用困難な建築物(廃屋等)が残されている土地についても、土地利用としてのニーズが存在します。

加えて、災害発生防止の観点からは、管理が実施されないと見込まれる所有者不明土地については、市町村において適宜の措置を講じる必要があります。

また、所有者不明土地利用を円滑にするためには、民間事業者の助力も必要です。

 

(3) 所有者不明土地特措法改正案の内容

以上の観点から、今般の改正案で以下の内容が盛り込まれました。

(1) 所有者不明土地の土地利用の円滑化の促進 ・所有者不明土地について、自治体等が備蓄倉庫等の災害関連施設や、再生可能エネルギー設備の整備に利用することが可能となる。

・民間事業者が再生可能エネルギー設備のための土地使用権の上限期間を10年から20年に延長される。

・建造物等が土地上に存していても、その建造物が廃屋であれば、自治体等が活用したり、容易に収用することが可能となる。

(2) 災害等の発生防止に向けた管理の適正化 ・管理が見込まれない土地について、周辺の地域の災害等の発生を防止するための代執行制度が創設され、ごみやがれきの撤去が可能となる。
(3) 所有者不明土地対策の推進体制の強化 ・土地を利用者に仲介する法人を指定することが可能となる。

・所有者探索にあたり、国に援助を求めることが可能となる。

 

法律改正にあたって、施行後5年間で、75件の備蓄倉庫や再生可能エネルギー設備のための所有者不明土地の使用権設定や、150件の所有者不明土地対策計画の作成等が目標として掲げられています。こうした制度改革と自治体等の対策推進の両輪で、所有者不明土地に関する問題に対処していくことが期待されます。

 

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