コラム

遺産分割の期間制限の内容と施行前の相続についても相続登記義務があることを指摘する記事が掲載されました(日本経済新聞)

2022/01/13
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2022年1月8日 日本経済新聞朝刊にて、「遺産争い、長期化にリスク 登記義務、施行前の相続も」との見出しの記事が掲載がされました。

 

日本経済新聞サイト記事: 遺産争い長期化にリスク 登記義務、施行前の相続も

 

1.遺産分割の期間制限について

改正後民法904条の3において、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割においては、寄与分と特別受益の規定が適用されないものとされました(改正後民法904条の3柱書)。その帰結として、10年経過した後は、法定相続分を前提として遺産分割を行うことになります。

ただし、10年経過する前に、相続人が家庭裁判所へ遺産分割請求をした場合(同法但書1号)、(10年を経過した後であっても)10年の期間満了前6カ月以内の間に、遺産分割請求をすることができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から6カ月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をした場合(同法但書第2号)においては、この限りではありません。

 

本条は、長期にわたり遺産分割を放置することに対し、寄与分及び特別受益という相続人の利益を失わせるという制裁を与えることで、遺産分割協議を促進し、もって所有者不明土地の発生を可及的に防止しようという趣旨に基づくものです。

 

本条の施行日は令和5年(2023年)4月1日とされています。注意点は、施行前に発生した相続についても適用されるという点です。また、施行日から5年間は、経過措置として同条の適用はありません。

 

したがって、寄与分、特別受益を主張するためには、

①平成30年(2018年)3月31日以前の相続

→令和10年(2028年)3月31日までに遺産分割請求をする必要がある。

②平成30年(2018年)4月1日以降の相続

→相続開始時から10年間の間に遺産分割請求をする必要がある

 以上のとおり整理されます。

 

今回の日経の記事は、上記改正を踏まえたものです。

 

ただ、1点気をつけなければならないのは、「遺産分割協議が不可能となるわけではない」ということです。寄与分と特別受益の規定が適用されないというのみで、相続人全員で具体的相続分による旨の合意があった場合には、寄与分と特別受益を考慮することもできますし、相続人の協議により、寄与分や特別受益に基づく遺産分割協議を成立させることも可能です*1(その意味で、今回の記事を、「遺産分割ができなくなる」という趣旨に読み取るのは若干ミスリーディングです。)

 

2 相続登記について

改正不動産登記法76条の2は、令和6年(2024年)4月1日に施行されます。同法は、土地・建物の相続登記を義務付けています。

改正によって相続開始から3年以内に登記する義務が課され、登記しないと10万円以下の過料となります。これにより、(相続登記を行う契機としての)遺産分割協議を促進し、所有者不明土地の発生を抑制することが予定されています。

上記記事はこの点を踏まえた記事です。

 

3.コメント

今回の日経の記事は、令和3年民法・不動産登記法改正(所有者不明土地関係)を踏まえた記事です。ややミスリーディングな点もありますが、具体的ケースを提示したうえで、遺産分割未了の不動産について早期に対応することの重要性を指摘するものです。

遺産分割協議、相続登記義務化、特に後者については期限が短くなっています。長期間相続登記が未了となっている不動産にお悩みの方は、是非一度弁護士相談をお勧めします。

 


*1 部会資料42(遺産の管理と遺産分割に関する見直し。PDFファイル) 第1の5(8頁参照)

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