コラム

2 竹木の枝の切除等

2021/12/13
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(1) 現行法の内容とその問題点

改正前民法第233条第1項は、「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。」としています。そのため、竹木の所有者が枝を切除しない場合、越境した竹木の枝により土地の利用が妨げられている土地の所有者は、竹木の所有者の所在を探索した上で、訴訟を提起して、請求認容判決を得た上で、強制執行を申し立てる必要があります。しかし、この手続には少なくない時間を要し、土地の円滑な管理の妨げになっているとの指摘がありました(部会資料7 1頁参照)。

また、民法233条2項の根の切除の場合においては判決がなくても切除できる旨定められていることとの平仄が合わないとの指摘もありました(部会資料7 2頁参照)。

このことから、隣地の管理をより円滑に行うことを可能とする観点から,越境された土地の所有者が枝を自ら切り取ることを認める方向での検討が行われました。

 

(2) 問題点を解決する方向性

法制審議会では、竹木を自ら伐採できるという案も検討されました(中間試案の補足説明99頁参照。)。

しかし、枝の切除請求における隣地所有者の手続保障に鑑み、現行法と同様に、土地所有者は、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができるとする原則的規律を設けるに留めています。そのうえで、類型的に土地所有者による直接の救済が具体的妥当性を持つ場合には、判決によらずに土地所有者が自ら竹木の枝を切除することができる事が可能とする方向で整理がなされました。

また、竹木が共有に属する場合には、各共有者がそれぞれ越境した竹木を伐採できるものとされました(これは、共有者間の権限の規律として整理されています。部会資料51 3頁参照。)。

 

(3) 解決のために定められた条項の内容とその趣旨

ア 条項の内容

改正後民法第233条の規律は次のように改められました。

① 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる(改正後民法233条1項)。

② ①の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる(改正後民法233条2項)。

③ ①の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる(改正後民法233条3項)。

ア 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。

イ 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

ウ 急迫の事情があるとき。

イ 改正法の趣旨

 本文①については、先述の通り、枝の切除請求における隣地所有者の手続保障を重視し、原則として、判決を経ずに自ら枝の切除を行うことはできず、竹木の所有者に枝を切除させることができるという規律を維持したものです。

 本文②については、竹木が共有されている場合に、竹木の共有者のいずれもが枝を適切に管理せずに越境させていることに着目して、そのような状況下での共有者間の権限として、共有者自ら竹木を切除することができると整理するものです。この結果、竹木が数人の共有に属する場合、土地所有者は、共有者の一人に対しその枝を切除させることについての給付判決を得れば、代替執行の方法により強制執行をすることができます(部会資料59 4頁参照)。

 本文③については、類型的に土地所有者による直接の救済が具体的妥当性を持つ場合に土地所有者が自ら竹木の枝を切除することができる事を可能にするためのものです。

 

(4) 残された課題等

土地所有者が切り取った枝の所有権が問題になります。すなわち、土地所有者が切り取った枝が竹木の所有者のものであるとすると、切り取った枝を自ら処分できません。この点の規律が残された課題として残っています。同様の問題が竹木の果実にも存在します。

なお、法制審議会では、竹木の枝の切除及び根の切り取りの費用について、竹木所有者の負担とすることについての規律を設けることも議論されましたが(部会資料32 14頁参照。)、枝や根の越境について通常は不法行為が成立し、損害賠償請求権が発生することからすれば、特に規律を設けなくても、切除費用は通常竹木所有者の負担となると考えられることから、特別の規律を設けないこととされました(部会資料46 6頁参照。)。

 

 

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