コラム

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案 第1の1 隣地使用権

2021/03/07
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1 隣地使用権

(1) 現行法の内容とその問題点

現行の民法209条1項は、「土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。」と定めています。

しかし、

① 例えば庭石を移設する工事等、同項に挙げられていない工事等の際に、隣地の使用を請求できるかは必ずしも明らかではなく、土地の利用が制限されている(法制審議会部会資料(以下単に「部会資料」)7 20頁参照)、

② 民法209条1項は、隣人に対して隣地の使用を請求する権利を定めたものと解釈されるところ、隣人の承諾を得ることができない場合には、裁判所に訴えて承諾に代わる判決を求めなければならない(部会資料7 21頁参照。なお、我妻栄「新訂 物権法」286頁参照。)、

③ 隣地を現に使用する人がいない場合には、隣地所有者を探索する必要があり、時間と労力がかかるという結果になります。以上のことから、土地の利用の阻害要因となっている(部会資料7 21頁参照)、

以上のような指摘がありました。

 

(2) 問題点を解決する方向性

①については、類型的に隣地を使用する必要性が高いと考えられる所定の目的を列挙する方向で(民法 不動産登記法等の改正に関する中間試案の補足説明(以下「中間試案の補足説明」)93頁)、

②については、承諾を得なくても使用できるという法的構成を採用する(したがって承諾のために判決を取得する必要はない)、ただし、使用の日時、場所及び方法は、必要な限度で損害が最も少ないものを選択させるとともに、隣地所有者及び隣地使用者に対する利益を保護するためにその双方に事前通知を行うという方向で(部会資料56 2頁参照)、

③については、隣地所有者及び隣地使用者の探索の負担を考慮し、あらかじめ通知することが困難な場合には、事後通知で足りる規律を設ける方向で(部会資料56 3頁参照)、

調整が図られています。

 

(3) 解決のために定められた要綱案の内容とその趣旨

ア 要綱案の内容

要綱案は、民法第209条の規律を次のように改めるものとしています。

① 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。

ア 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕

イ 境界標の調査又は境界に関する測量

ウ 2③の規律による枝の切取り

② ①の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(③及び④において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

③ ①の規律により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。

④ ①の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

 

イ 要綱案の趣旨

本文①については、従前の規定に追加する形で、隣地使用が必要となる典型的な3つの類型を列挙しています。

本文②及び本文③は、本条項が土地の所有者の所有権を制約するものであるため、その制約の程度を必要な限度とし、他方で、隣地所有者及び隣地占有者保護のため、これらに対する事前通知制度が設けられました。但し、これらの探索の負担を抑えるために、事後通知でも足りるとされています。

本文④は、償金を請求できるとすることで、隣地所有者及び隣地使用者の保護を図る趣旨で定められたものです。

 

(4) 残された課題

隣地が譲渡された後、移転登記未了の場合に、誰に対して通知すれば良いのか(登記名義上の所有者のみに通知すれば足りるのか)という点については明らかではありません。この点については、民法177条の対抗関係類似の関係に立ち、登記名義人に事前通知すれば足りる、事後的に譲渡の事実が判明した場合には、「あらかじめ通知することが困難なとき」として譲受人に通知すれば足りる、と整理することができるのではないかと考えます。

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