コラム

<共有持分の放棄>共有持分放棄が機能する場合

2019/09/23
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1.共有持分放棄の概要

「共有」とは、1つの物を複数人が所有する共同所有のうち、各人が持分を有しこれを自由に譲渡できる法形式をいいます(民法249条)。

「共有持分」とは、共有関係に基づいて各人が有する持分のことです。共有持分は放棄することができます(民法255条)。放棄した共有持分は他の共有者に帰属することになります。

共有持分放棄の手続は、比較的簡単に行うことができます。

(具体的内容は、下記の本HP記載のとおりです。)

共有持分の放棄

 

では、共有持分放棄という制度は、どのような場面で役に立つのでしょうか。今回は具体的事例を紹介します。

 

2.空き家の共有関係から離脱したい場合

あなたに、相続などで共有名義となっている空き家があるとします。この空き家には、あなたの叔父にあたる方が住んでいましたが、お亡くなりになりました。叔父さんに奥様やお子さんがいなかったため、叔父さんの兄弟姉妹及びその子など共同相続することになり、あなたも相続を原因として建物の共有持分を有しているとします。

ご実家は地方にあり、都市部在住のあなたにとっては無用のものです。逆に誰も住んでいないため傷みが激しく、場合によっては、近隣に迷惑をかける可能性もあり、撤去の必要に迫られる可能性もあります。しかし、あなたと叔父さんはそもそも没交渉の関係にあり、また、空き家の近くには別の親族がいることから、その方々に譲っても構わないと考えているます。

このような場合に、共有持分の放棄により、共有関係から離脱することができます。

放棄後に生じた管理費用や撤去費用については、他の共有者がその責任を負うことになります。

逆に言えば、自らが管理・処分したいと考える共有者が、他の共有者に対して共有持分の放棄手続きを持ち掛けることができます。共有持分割合が少ない共有者は、今後無用な負担を避けるためにこれに応じることがあります。

共有関係放棄を第三者に対抗するためには、その旨の登記が必要です。この場合、他の共有者が登記手続に協力しない場合には登記引取訴訟を提起する必要がありますので、その点注意する必要があります。

 

3.私道の共有関係を解消したい場合

分譲地の私道については、当時分譲を受けた方々の共有になっている場合があります。しかし、時間が経過するにつれて、共有者の方が分譲地を手放す場合もあり、私道の共有名義だけが残されるという場合があります。

この場合、仮に分譲地に居住していなくても、法的には共有者としてその管理費用等を負担しなければならないという可能性、また、共有関係を原因とする各種法的なトラブルに巻き込まれる可能性があります。

このような場合にも、共有持分を放棄することで共有関係を離脱することができます。

他の共有者が登記に協力しない場合に登記引取訴訟を提起する必要があることは、空き家の事例と同様です。

 

4.共有持分放棄制度の積極的活用を

共有持分放棄は、一方的にその持分権を放棄することができるという点で非常に使い勝手の良い制度です。

所有者不明土地問題や空き家問題が生じる原因の一つは共有関係が存在することです。共有関係が放棄により解消されることは、所有者不明土地問題の解決の一助になるといっても過言ではありません。

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