抵当権登記名義人不明(休眠担保権)問題
はじめに
抵当権を抹消したいが、名義人(債権者など)を知らない
不動産を売却したり、不動産を担保にして融資を受けようと思ったら、大昔に設定された抵当権が設定され、その債権者や債務者が不明であった。売却できるか、融資を受けられるか不安。
売却する際に、権利関係はきれいにしておきたい。
弁護士であれば、そのような方のお手伝いができることがあります。
休眠担保権とは
このように長期間放置されたままの古い抵当権(担保権)を、一般に「休眠担保権」といいます。
休眠担保権が付着したまま放置していると、以下のようなデメリットが生じます。
休眠担保権が付着している場合のデメリット
- 担保権が付いたままだと、売却することが難しくなることがあります。
- また、金融機関等は、担保権が付いた不動産を担保として融資することを敬遠することがあります。
そのために、不動産を担保にして融資を受けることも難しくなることがあります。
抹消の方法
債務が消滅しても担保権に関する登記から当然に削除されるわけではありません。
登記を抹消するためには担保権抹消登記を申請する必要があります。
担保権抹消登記の申請は、原則として、不動産の所有者と抵当権登記名義人が共同で申請しなければなりません。そのため、登記名義人を探し出す必要があります。
無事に登記名義人を探し出すことができ、抵当権の抹消に同意してくれるのであれば、抵当権を抹消することができます。
しかし、登記名義人が同意してくれない場合や、その行方が分からない場合等には、抵当権抹消登記手続を求める訴訟を提起し、抵当権を抹消せざるを得ない場合があります。
解決までの流れ
ご相談
まずは弊事務所にて御相談頂きます。
この際、不動産の住所・状況や抵当権の内容についてお伺いします。
抵当権名義人の調査
戸籍の附票等(個人)、登記簿謄本(法人)を利用して名義人の状況調査をします。
まず、不動産の登記事項証明書を法務局で取得します。
相続人が確認できれば、各自の戸籍の附票を取得して相続人の住所を確認します。
※住民票の除票・戸籍全部事項証明書は弁護士の職務上請求により取得します。
弁護士の職務上請求とは…
戸籍謄本や住民票の写しなどは、本人やこれに準ずる者でない第三者が自由に取得できるわけではなく一定の要件を満たす必要がありますが、弁護士であれば一般の場合に比べて異なる要件の下で認められています。
個人の場合と同様、不動産の登記事項証明書には登記名義人である法人の名称と所在地の記載があるので、登記事項証明書から法人の所在地を確認します。
法人の所在地に、法人が実在しているか否かを確認したうえで、手続きを進めます。
名義人の調査結果
名義人の所在等が判明した場合
- 名義人と抹消登記の交渉をします。なお、既に被担保債権が消滅している場合が多いと思われますが、未払があった場合には、時効援用などの対応をします。抹消登記について同意が取得できれば、抹消登記の手続に移ります。
- 同意が取得できない場合や名義人の所在等が判明しても応答がない場合などは、抹消登記を求めて裁判所に訴えを提起することになります。
名義人の所在等が判明しない場合
公示催告手続、又は、訴訟において公示送達手続をとることにより、抹消登記を行います。
公示催告手続とは…
登記権利者は、登記義務者の所在がしれないため登記義務者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することが出来ない時は、非訟事件手続法に規定する公示催告の申し立てをして、除権決定を得ることにより、単独で登記の抹消を申請することができます。
この方法は、休眠担保権だけでなく、登記義務者が行方不明となっている地上権など(いわゆる休眠用益権)についても利用することができます。
- 登記簿謄本が取得できない場合
公示催告手続を行うことになります。 - 登記簿謄本が取得できるが、その場所に法人の実態が無い場合
裁判所に清算人の選任申立てを行ったうえで、
・清算人より抹消登記の同意を取得する。(但し、困難な場合が多いです)
または
・清算人に対して抹消登記請求訴訟を提起するということになると思われます。
登記手続について
登記手続は、当事務所と連携する司法書士事務所にて手続させて頂きます。
弁護士に抵当権抹消登記手続を任せるメリット
以上のように、抵当権名義人(=登記義務者)の承諾が得られるのであれば、抹消登記の手続は比較的スムーズに進みます。
ところが、抵当権名義人の調査だけでも、相続人が多数に及ぶような場合には、各相続人への連絡などが煩雑になりますし、抵当権名義人を探し出せたとしても、登記の抹消に応じてくれない場合や、そもそも抵当権名義人を探し出せなかった場合には、訴えを提起しなければなりませんが、このように面倒な調査や訴訟手続については、専門知識を有する弁護士が対応します。
弁護士費用について
弁護士費用は、対象となる不動産の価格、共有持分権者の数や必要な手続の見込みなどにより大きく変動します。
原則として、旧弁護士報酬基準により算定させて頂きますが、ご相談の際に詳細に説明させていただきます。